医療保険は不要 だという話を耳にすることがありますが、本当なのでしょうか?
もし本当に不要なのであれば、わざわざ加入したくないですよね。とはいえ一方で、 「入院したときに医療保険があったから助かった」 と話す人がいるのも事実です。
いったい、 どちらが正しい のでしょうか。
ここでは、「医療保険が不要」と言われる背景を掘り下げたうえで、実際にかかる医療費の金額と医療保険の費用対効果という2つの観点から、医療保険が不要か必要かを徹底的に検証します。
この記事を参考に、医療保険が不要か必要かを自分で判断できるようになりましょう。
はじめに:世帯主なら9割が加入している医療保険
医療保険が必要か不要かを検証する前に、まずは実際にどれくらいの人が医療保険に加入しているのか、統計データを見てみましょう。
生命保険文化センターの令和6年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、 2人以上世帯における世帯主の医療保険(特約含む)加入率は90.0%、配偶者の加入率は69.8% となっています。単身世帯ではこれより低い加入率になると思われますが、29歳以下の層に限ってみても、世帯主は89.1%、配偶者は60.9%と高い水準です。このことから、若い世代を含め、かなり多くの人が医療保険に加入していると考えられます。
このような高い加入率を見ると、 多くの人が医療保険を「必要なもの」と捉えている と言えそうです。
詳しくは以下の表をご覧ください。
■医療保険・特約加入率(2人以上世帯、世帯主年齢別)
| 世帯主年齢 | 加入率(%) | |
| 世帯主 | 配偶者 | |
| 全体 | 90.0 | 69.8 |
| 29歳以下 | 89.1 | 60.9 |
| 30~34歳 | 93.7 | 74.0 |
| 35~39歳 | 91.6 | 71.6 |
| 40~44歳 | 89.6 | 73.2 |
| 45~49歳 | 93.1 | 75.0 |
| 50~54歳 | 94.0 | 68.5 |
| 55~59歳 | 92.8 | 73.3 |
| 60~64歳 | 90.3 | 69.7 |
| 65~69歳 | 91.6 | 75.1 |
| 70~74歳 | 87.7 | 64.6 |
| 75~79歳 | 84.2 | 67.8 |
| 80~84歳 | 73.5 | 52.0 |
| 85~89歳 | 58.6 | 31.0 |
| 90歳以上 | 50.0 | 40.0 |
(出典)生命保険文化センターの令和6年度「生命保険に関する全国実態調査」より
医療保険
女性医療保険
医療保険が不要とはどういうこと?
ここまで見てきたように既に多くの人が医療保険に加入していますが、医療保険が不要とはどういうことなのでしょうか?
一般的に「医療保険が不要」と言われる場合、そこには主に次の2つの意味があると考えられます。
ひとつは、 「医療保険に加入していなくても医療費を支払える」 という意味。
もうひとつは 「医療保険は割に合わず、結果的に損をする」 という意味です。
医療保険が自分にとって必要か不要かを考える際には、この2つを切り分けて考えないと、判断を誤ってしまう可能性があります。それぞれについて、自分の場合はどうなのかを整理して考えることが大切です。まずは、「医療保険がなくても医療費を支払えるかどうか」という点から確認していきましょう。
[不要検証1]医療保険がなくても医療費は払えるのか?
医療保険が必要か不要かの判断として、まずは、「医療保険に入っていなくても医療費は払えるものなのか?」ということを検証していきます。
そのためには、入院や手術を受けた場合に、医療費の自己負担がどの程度になるのかを理解しておく必要があります。
医療費の自己負担は3割
私たちは国民皆保険制度のもと、健康保険(公的医療保険)に加入しています。そのため病院を受診したときや、処方せんを持って保険薬局で薬の調剤を受けたときには、保険証を提示することで、医療費の一部を自己負担するだけで済む仕組みになっています。
この制度により、原則として医療費の自己負担は3割です。たとえば、
10万円かかる治療を受けた場合でも、実際に窓口で支払う額は3万円ですむ
ことになります。
※小学校入学前の児童や70歳以上のシニア層の負担割合は下記表のように違います。
■医療費の一部負担の割合
| 年齢 | 自己負担割合 |
| 小学校入学前 | 2割 |
| 小学校入学以後 70歳未満 | 3割 |
| 70歳以上 75歳未満 |
2割
(現役並み所得者は3割) |
| 75歳以上 |
1割
(現役並み所得者は3割) (一定以上の所得がある人は2割) |
一月あたりの自己負担額は原則8万円ちょっとでよい
健康保険に加入していれば、医療費の自己負担は3割に抑えられています。しかし、大きな病気やけがをした場合、「それでも何十万円もの医療費がかかってしまうのでは」と不安に感じる方も多いでしょう。
ご安心ください!上限があります。
公的医療保険には、 「高額療養費」 制度という自己負担額に上限を設ける仕組みがあります。
この制度では、1ヵ月あたりの医療費自己負担額に上限が設定されており、細かな医療費の内訳を知らなくても、「原則としていくらまで負担すればよいのか」がわかるようになっています。
高額療養費による1ヵ月あたりの限度額は?
高額療養費制度を利用すると、 会社員の場合、多くの人は1ヵ月あたりの医療費の自己負担額は8万円強 で収まります。ただし、高額療養費は月単位で計算されるため、1回の入院であっても月をまたいだ場合には、合計で十数万円程度になる可能性があります。
また所得が高めの人の場合は1ヵ月の自己負担限度額は17万円程度となり、高額所得者は25万円強となります。
なお、これらは1ヵ月の限度額です。したがって、もし長期の入院ということになればこの額が何ヵ月か続くことになります。ただし、
高額療養費の給付を1年間に3回(3カ月)以上受けている場合、4回目以降は多数該当となり、一般の所得区分であれば44,400円が上限
となります。
※高額療養費による限度額については、以下に区分表を掲載しますので、興味のある方はこちらをご覧ください。
■高額療養費の区分(70歳未満)
| 所得区分 | 自己負担限度額 | 多数該当 | 年間上限額 |
|
健保
:標準報酬月額83万円以上
国保 :年間所得901万円超 (年収の目安 約1,160万円~) |
270,300円+
(総医療費2-901,000円)×1% | 140,100円 | 1680,000円 |
|
健保
:標準報酬月額53万~79万円
国保 :年間所得600万~901万円 (年収の目安 約770万~1,160万円) |
179,100円+
| 93,000円 | 1110,000円 |
|
健保
:標準報酬月額28万~50万円
国保 :年間所得210万~600万円 (年収の目安 約370万~770万円) |
85,800円+
(総医療費-286,000円)×1% | 44,400円 | 530,000円 |
|
健保
:標準報酬月額26万円以下
国保 :年間所得210万円以下 (年収の目安 約210万円以下) | 61,500円 | 44,400円 | 530,000円 |
| 住民税の非課税者等 | 36,900円 | 24,600円 | 290,000円 |
(出典)厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」等を基に編集部作成
入院日数の平均は28.4日
では、実際に長期入院となるケースがどの程度あるのか、統計データを見てみましょう。
厚生労働省の「令和5年患者調査」によると、 一般的な平均入院日数は28.4日 。したがって、 入院が3ヵ月以上にわたるケースはそれほど多くない と考えられます。
■傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数(2023年)
| 主な傷病 | 平均在院日数 (日) |
| 傷病全体 | 28.4 |
| 結核 | 44.3 |
| ウイルス肝炎 | 13.4 |
| 胃の悪性新生物 | 14.7 |
| 結腸及び直腸の悪性新生物 | 15.3 |
| 肝及び肝内胆管の悪性新生物 | 13.6 |
| 気管,気管支及び肺の悪性新生物 | 14.1 |
| 乳房の悪性新生物 | 9.4 |
| 糖尿病 | 31.8 |
| 高血圧性疾患 | 41.6 |
| 心疾患 (高血圧性のものを除く) | 18.3 |
| 脳血管疾患 | 68.9 |
| 肺炎 | 26.0 |
| 肝疾患 | 22.3 |
| 慢性腎臓病 | 57.3 |
| 骨折 | 35.4 |
(出典)厚生労働省「令和5年患者調査」より
高額療養費についての注意点
すでに説明したように、高額療養費制度によって医療費の自己負担額は一定の上限額に抑えられます。この上限額までの支払いが可能であれば、医療保険は不要だと感じるでしょう。
ただし、この制度には注意点があります。 高額療養費の対象となるのは、あくまでも健康保険が適用される医療費のみ です。健康保険が適用されない 差額ベッド代や先進医療の技術料などは、高額療養費の対象外 となり、全額自己負担となるので、注意が必要です。
医療保険がなくても医療費は払えるか?
ここまで、健康保険における自己負担額という視点から、医療費がどれくらいかかるかを見てきました。では、その金額が実際に払えるかどうかを考えてみましょう。
たとえば、一般的な所得の会社員が手術を受け、10~20日間程度入院したとします。この場合、入院が月をまたがず、1月内におさまれば、 高額療養費により自己負担額は8万円強 で済みます。仮に 入院が月をまたぐとしても、自己負担額は16万円程度 にはおさまるでしょう。
さて、この金額は医療保険に入っていなくても払える金額でしょうか?
払えるならば、医療保険は不要ということになります。
同じ収入であっても、生活スタイルや貯蓄額は人それぞれ違います。したがって、ある程度預金があり、 急遽16万円くらいの支払いがあっても生活に困ったり将来の人生設計に影響がない人であれば、払える と言えるでしょう。そうでない人はちょっと困るかもしれません。
そのほか、入院時に大部屋ではなく、個室や少人数の部屋を希望する場合には、 差額ベッド代 がかかります。
厚生労働省 令和6年7月「中央社会保険医療協議会 総会(第591回) 主な選定療養費に係る報告状況」によると、 1日あたりの差額ベッド代の平均は6,862円 です。 10日間の入院であれば約6.8万円 、 20日間の入院であれば約13万7000円 は自己負担額が増えることになります。
少人数部屋を希望する人は、高額療養費の自己負担限度額に加えてこの金額も払えるかどうかで判断が必要となります。
■平均的な1日あたりの差額ベッド代(推計)(令和6年8月1日時点)
| 部屋の種類 | 料金 |
| 平均 | 6,862円 |
| 1人部屋 | 8,625円 |
| 2人部屋 | 3,149円 |
| 3人部屋 | 2,778円 |
| 4人部屋 | 2,780円 |
(出典)厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第591回)議事次第」より
さらに、可能性は低いものの、数ヵ月以上に及ぶ長期入院となるケースも考えられます。その場合、自己負担額はさらに増えます。こうしたリスクまで想定するかどうかによって、「 医療保険がなくても支払えるか 」という判断は変わってくるでしょう
医療費の支払い能力からみた医療保険が不要な人、必要な人
ここまで「医療保険に加入していなくても医療費は払えるのか」という観点から検証してきました。これらを踏まえると、医療保険が不要な人、必要な人はどのようなタイプに分けられるのでしょうか。
医療保険が不要な人
医療保険が不要または加入しなくてもよさそうな人は、以下のようなタイプです。
・貯蓄が十分にある人
所得水準にもよりますが、急に10〜20万円程度の医療費が発生しても困らず、そのような支出が生涯に数回あったとしても問題ないと考えられる人です。
ただし、入院で個室希望の場合は、さらに多くの資金が必要なので、その分も無理なく支払えることが前提となります。
また、確率は低いものの、難病を患ったり、何度も入院を繰り返したりする可能性は誰にでもあります。そうしたリスクについても割り切って考えられることが、医療保険が不要な人の条件のひとつと言えるでしょう。
・資産家
多額の資産があり、現金資産だけでも何千万円、あるいは数億円規模の余裕がある人です。たとえば、先進医療で300万円程度かかる重粒子線治療を受けた場合や、健康保険が適用されない自由診療を選択した場合、さらには寝たきりの状態になったとしても、経済的にまったく困らない人が該当します。
医療保険が必要な人
一方で、医療保険に加入しておいたほうがよいと考えられる人は、次のようなタイプです。
・急な医療費などがあると日常生活に影響がある人
急に10~20万円の出費があると、普段どおりの生活を送るのに支障が生じて困ることになりそうな人は、医療保険があったほうが安心です。
・手厚い医療を受けたい人
入院したら個室に入りたい、状況によっては保険適用外の薬や診療も試したい、先進医療を受けたいといった人は医療保険に加入しておくことで選択肢が広がります。
・重い病気やけがになったときのことが不安な人
ちょっとした手術や入院はともかく、重い病気にかかった場合や、人生の中で何度も手術や入院をすることになった場合が不安な人は、医療保険に入っておいたほうが精神的にも安心できるでしょう。
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[不要検証2]医療保険は割に合う商品なのか?
それでは次に、医療保険が不要だと言われるもう一つの意味である「医療保険が割に合う商品なのか、意義がある商品なのか」という点について見ていきましょう。そのために、どれくらいの保険料を支払い、どれくらいの給付金を受取れそうかという視点から考えていきます。
生涯に払う医療保険料はどれくらい?
たとえば、Mさん(30歳・男性)が、入院日額1万円の標準的な医療保険に加入した場合を想定してみましょう。
【契約内容】
A社 終身医療保険
・被保険者:Mさん(30歳・男性)
・保険期間:終身
・入院日額:1万円(60日型)
・手術給付金:入院中40・20・10万円/外来5万円
・その他保障:三大疾病支払日数限度無制限特則、先進医療・患者申出療養特約
・保険料(健康保険料率適用):終身払い 月額2,942円/60歳払い済み 月額4,667円
※2026年1月6日試算
この場合の 総支払保険料は、終身払いで80歳まで生きたとすると1,765,200円、60歳払い済みなら合計1,680,120円 となります。
医療保険の給付金はどれくらいもらえそうか?
さきほどのMさんが手術(重大ではない)をして20日間入院したとしましょう。この場合に医療保険から給付される金額は、 手術給付金10万円、入院給付金20万円で合計30万円 になります。
Mさんがもし重大な手術を受けることがあれば、 手術給付金は40万円受け取れますし、仮に60日間入院するようなことがあれば、入院給付金として60万円 を受け取れます。
結局、医療保険は得なのか損なのか?
それでは、支払った保険料の額ともらえる給付金の額を比べて、医療保険が得なのか損なのかを考えてみましょう。もし損なら、医療保険は不要という結論になります。
Mさんの場合、保険料の総支払額は60歳払い済みの場合で約168万円でした。 元を取るためには、先ほどのような手術を伴う20日間程度の入院を生涯で6回経験する必要があります 。
どうでしょうか?あなたの家族や親戚、知人の中に、これまで何度も入院を繰り返している方はどれくらいいるでしょうか。
もちろん、人によって状況は異なります。難病にかかって、入退院を繰り返している人もいるでしょう。しかし、割合としては、そうしたケースは非常に少ないのではないでしょうか。
加入者一人ひとりで見れば、支払った保険料以上の給付金を受け取れる人はごく一部に限られる はずです。
このことは、実は計算するまでもありません。たとえは適切ではないかもしれませんが、 宝くじで高額当選する人がほんの一握りで、ほとんどの人が損をしているのと同じ理屈 です。そうでなければ、保険会社は利益を出すことができませんし、そもそも保険という仕組み自体が成り立たなくなってしまいます。
つまり、 医療保険が得か損かという視点で見ると、大部分の人は損をする ことになるのです。
とはいえ、保険とは本来そういうものです。多くの人が協力し合って、重い病気にかかったり、何度も病気やけがをしてしまったりして困っている一部の人を助けるのが医療保険なのです。医療保険に加入したあなたが、助けるほうになるのか助けてもらうほうになるのかは、誰にもわかりません。
損得からみた医療保険が不要な人
このように医療保険を損得勘定で考えた場合に、医療保険が不要な人は以下のような人になります。
・損をしたくない人、経済合理性を重視したい人
医療保険は、多くの場合損をすることになります。損をするのが嫌な人や経済合理性を重視する人にとって、医療保険は不要といえます。
ただし確率は低くても、難病になってしまったり、何度も入院するようなことになってしまったりする可能性は誰にでもあり、そういうときのことを割り切って考えられる人でなければなりません。
逆に、
保険という仕組みで安心したいという人は医療保険が必要
です。
まとめ:医療保険が不要な人もいるが、最終的にはあなたの家計の状況と価値観で決める
今回は、 「医療保険は本当に不要なのか」 というテーマについて検証してきました。日本は健康保険制度(公的医療保険制度)が充実しており、医療費の自己負担額は一定の範囲に限定されています。したがって、万一の場合に何千万円というお金を残すことを目的とする 生命保険と比べると、必要性はそれほど高くない とも言えるでしょう。
しかし、私たちはいつ病気やけがをして入院することになるのかは分かりません。思いがけない出費があって困るということもあるでしょう。
こうしたリスクをどの程度重く受け止めるかによって、判断は分かれます。また、家計の状況や資産額は人それぞれ異なり、価値観や人生観も違います。そのため、医療保険が自分にとって必要か不要かを判断できるのは、他でもない自分自身だと言えるでしょう。
医療保険に加入するかどうかは、本記事で紹介した 「医療保険が不要な人」「医療保険が必要な人」 の考え方を参考にしながら、ご自身の状況に照らして、じっくり検討してみてください。
医療保険が不要な人
- 貯蓄が十分にある人
- 資産家
- 損をしたくない人、経済合理性を重視したい人
医療保険が必要な人
- 急な医療費などがあると日常生活に影響がある人
- 手厚い医療を受けたい人
- 重い病気やけがになったときのことが不安な人
- 保険という仕組みで安心したい人
※本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。









